040 広島県 向島の岩屋巨石

【Introduction of Iwakura40】


□分類:天文利用のための岩石遺構(広義のイワクラ) 

□信仰状況:寺院に祭祀されている 岩屋:寺院として利用、北側の巨岩:磨崖仏  

□岩石の形状:巨岩組 岩屋、北側にはV字に割れた巨岩

□備考:人工物、岩石遺構と太陽の関係の分類 岩屋:スポット型、北側の巨岩:ノーマルA-3型 


□住所:広島県尾道市向東町

□緯度経度:34°24'10.90"N 133°12'36.57"E

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広島県尾道市の千光寺、西國寺、浄土寺が、向島の岩屋山を向いて建てられているという説が尾道の彫刻家児玉康兵氏によって2000年に発表され、尾道市大学の稲田全示教授らによって詳しく調査されました。寺院には宗派によって崇拝する方位が決まっており、尾道を代表する3つの寺院が全て一つの山を向いて建てられているのは異例です。その岩屋山には、「岩屋巨石」と呼ばれる巨岩組があり、尾道の三寺院は、この岩屋巨石を拝していると考えられます。

岩屋巨石の内部には岩屋薬師如来が祀られ、壁には磨崖仏や梵字が彫られています。これらは当然ながら、6世紀半ばの仏教伝来以後に彫られたものです。ここで注目すべきは、巨岩組の左側の巨岩と上部の巨岩に線刻が彫られていることです。線刻の意味については不明ですが、仏教伝来以降に彫られた磨崖仏の彫りの浅さに比べて非常に深く彫られており、風化の速度から線刻が彫られた時代が数千年前であったとしても矛盾はありません。

岩屋の天井部の巨岩は凹状に加工されています。また、岩屋を支える左の巨岩は凸部となっており、この凹凸がピッタリとはまりそうですが、本来、2つの巨岩が収まるべき位置から数十センチずれています。また、南側からこの岩屋の様子を観察すると、岩屋を支える左の巨岩が1つの巨岩を2つに割った後、1.5メートルほどずらして造られていることがわかります。わざとずらして造られているのです。なぜ、このような造作を施したのかは不明です。この岩屋の開口部は、東南東(120度)の方角を向いているため、冬至の朝には、岩屋の奥に朝日が差し込みます。『岩石遺構と太陽の関係の分類(平津豊、J-AASJ、2022-1 vol4、2023)』では、スポット型に分類されますが、詳しい調査はできていません。

岩屋の北側には、V字に割られた巨岩があり大きな不動明王が彫られています。この磨崖仏も、仏教が伝来した後の仕業です。この巨岩のV字の方位は西南西(240度)で、冬至の日の入りの方位にピタリと重なります。つまり冬至の日に北東側に立てば、このV字の隙間に日が沈むことになります。2つに割られた巨岩の奥の先端が割り落とされて、光が通るように造られています。『岩石遺構と太陽の関係の分類(平津豊、J-AASJ、2022-1 vol4、2023)』では、ノーマルA-3型に分類されます。

冬至の朝日が照らす岩屋開口部、冬至の太陽が沈むV字の岩と、1つの岩組みに2つの太陽軌道の特異点(ニ至ニ分)が存在しているのは偶然ではなく、この岩屋構造全体が太陽の特異点を意識して造られたものであることを示しています。

※この岩屋巨石一帯は、2020年7月末より立ち入り禁止となっています。 

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