【Introduction of Iwakura29】
□分類:信仰設備(広義のイワクラ)
□信仰状況:神社に祭祀されている
□岩石の形状:岩群
□備考:
□住所:島根県出雲市大社町杵築北
□緯度経度:35°24'10.02"N 132°40'14.19"E
(googleに入力すれば場所が表示されます)
稲佐の浜に、出雲大社の祭祀が行われる塩搔島(しおかきしま)という場所があります。侵食された黒い石が寄り集まった場所で、元々は海の中の岩礁でしたが、時が経って陸地化しました。石で構成されていますが、神事の中で神を降ろすのかどうかが不明ですので、信仰設備(広義のイワクラ)という分類にしておきます。
出雲大社の古い祭祀に、旧暦7月4日(現在は8月14日)の深夜に行なわれる見逃げ神事と翌日に行なわれる爪剥祭(つまむぎさい)があります。祭の夜、大社の門は全て開け放たれます。数日前から大社に伝わる燧臼と燧杵で鑚り出した火で調理したものしか食さず、稲佐の浜で身を潔めた禰宜が、狩衣に青竹と火縄筒を持って神幸します。まず湊社と赤人社に詣でます。湊社の御祭神は、櫛八玉(くしやたまの)神で大社の社家である別火(べっか)氏の祖神です。その後、塩搔島で塩を搔いて帰路につきます。このとき、禰宜の後ろを大国主神がついて御神幸されていると言われています。この神幸は人に会ってはならず、もし誰かに出くわすと、最初からやり直さなければなりません。したがって、この夜は、大社町の人々は外出せずに物忌みを行なうのです。非常に重要な神事で、前日に禰宜によって「道見」と呼ばれる下見も行なわれます。
疑問だらけの神事ですが、この大事な神事に出雲国造は登場しません。どうしているのでしょうか。実はこの神事の間、国造は大社を出て一族の家で一泊するのです(現在は夜に帰っている)。
そして翌日、塩搔島で採取した塩をはじめ根付稲穂、瓜、茄子、根芋、大角豆、御水の7種の神饌を供えた爪剥祭が行なわれます。
これらの不思議な神事について、千家尊統氏は、見逃げ神事とは、ミカワリの転訛で、身が変わることすなわち潔斎を意味し、爪剥祭とは、タマムキの転訛で、魂迎えを意味すると説明しています。
しかし、私はこの説に納得していません。
見逃げ神事は、大国主が出現するのを怖れて国造が大社を逃げ出している姿そのものではないのでしょうか、また爪剥祭は、文字通り爪を剥がされたことを伝えた神事ではないかと考えています。
大正時代の『懐橘談』には、「別火という神官が本殿の鍵を守る役に就いている。その別火は、大国主の神を背負って、大社の内外を歩くと云う。信じがたいことである。それで人々は恐れて門戸を閉じてその夜は外に出ない。もし出て神に会えば、たちまち死ぬと云い広められている。」と記載されています。
爪を剥がされたのは出雲国造つまりアメノホヒなのでしょうかか、それとも大国主なのでしょうか。出雲は、謎に包まれています。
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