【Introduction of Iwakura178】Visit:2008.11.02/Photo:2011.3.19/Write:2025.6.21
□分類:磐座(狭義の磐座)
□信仰状況:神社に祭祀されている。
□岩石の形状:双岩
□備考:現在は「夫婦和合」を祈願する岩として扱われている
□住所:奈良県桜井市三輪
□緯度経度:34°31'43.856"N 135°51'08.232"E
(googleに入力すれば場所が表示されます)
大神神社の二の鳥居から拝殿へ向かう参道の左手に夫婦岩(めおといわ)があります。板垣の中に2つの岩が祀られています。大神神社に参拝する時に誰もが目にする岩石です。
室町時代の『三輪山古圖』には、2つの岩が描かれ「聖天石」と表記されています。隣にも名前の付いた岩が描かれていますが、こちらは無くなってしまっています。「聖天」とは仏教の守護神である大聖歓喜天のことで、ヒンドゥー教の神であるガネーシャを元としています。聖天の双身像は、象頭の男女が抱き合った姿で現され、夫婦和合や子授けなどを意味しています。仏教では聖天(しょうでん)と読みますが、神仏習合時代に呼ばれていた名前で、2つの岩から夫婦和合を連想して付けられた名前と考えられます。
江戸時代の『大和名所図会』(秋里舜福、竹原信繁、1791)には、2つの石が描かれフウフ石と表記されており、その説明文では、「夫婦(ふうふ)石、三輪明神影向の古跡」と記載されています。
2008年の夫婦岩の立看板には以下のように書かれていました。
「夫婦岩(めおといわ) 境内・三輪山には奥津磐座(奥の磐座)中津磐座(中の磐座)辺津磐座(山裾の磐座)と呼ばれる三ヶ所の神座があります。この磐座は辺津磐座の一つで室町時代の「三輪山絵図」を見ると「聖天石」と称し富貴敬愛を祈ると記されております。今日では二つの磐が仲良く寄り添っているので「夫婦岩」と称し「夫婦円満」「子授け」「縁結び」「恋愛成就」等に霊験あらたかな磐座としてご信仰を集めております」
現在(2023年)、の立看板には以下のように書かれています。
「二つの岩が仲良く寄り添っている形から夫婦岩と呼ばれています。古くは神様が鎮まる磐座で、中世の古絵図には聖天石として描かれており、夫婦和合・安産に霊験のある聖天になぞらえていたこともありました。この夫婦岩は大物主大神と活玉依姫の恋の物語である三輪山説話を伝える古蹟とされ、縁結び・恋愛成就・夫婦円満の霊験あらたかな磐座として信仰されています。」
この双岩の名称が聖天石から夫婦(ふうふ)石へ、そして夫婦岩(めおといわ)に変化してきたことがわかります。
これらの名称は、岩が2つあることから夫婦和合を連想して名付けたものと考えられますが、問題は岩石信仰の性質です。
「磐座」は、神様を降臨させる岩石ですので、祭祀を行っていないときは神は常在していません。ところが、現在の夫婦岩は、夫婦円満等を祈る「願い石」として取り扱われています。これは夫婦岩に特別な力があることを意味していますので「石神」に分類され、「磐座」ではありません。
一方で、江戸時代の『大和名所図会』には「三輪明神影向の古跡」と書かれています。これは夫婦岩に三輪の神が姿を現したことを意味しますので、本来の夫婦岩は磐座であったことを示しています。したがって、2008年の立看板に記載されていたように、本来は辺津磐座の一つであると考えられます。それが室町以前の時代に、現世利益を求める参拝者のために「夫婦和合」を祈願する石神へと変化したものと推測します。
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