140 沖縄県 玉城の太陽の門(タマグスクのティダヌジョウ)

【Introduction of Iwakura 140】


 □分類:石造実用設備(非イワクラ)

□信仰状況:祭祀されていないが過去に信仰の形跡あり。

□岩石の形状:岩単体(くり抜いた穴)

□備考: 13~14世紀の新しい人工物

 


□住所:沖縄県南城市玉城門原

□緯度経度:26°08'39.74"N 127°46'49.90"E

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タマグスク(玉城)は、沖縄島の南東部の南城市のグスクで、をアマツヅグスク、アマッズグスクとも呼ばれています。約180メートルの石灰岩の上に石積みが造られていて、一の郭、二の郭、三の郭が連なる構造をしています。未調査であり、石積みの一部は米軍の建築用石材へ持ち出されたため、正確な歴史はわかりませんが、13~14世紀に建築されたと考えられています。

他のグスクと同様に、このグスク内にもイビが複数存在しています。中でもアガル御イビ・ツレル御イビ(雨つづ天つぎ御嶽)は、開闢神であるアマミキヨが造ったウタキ(御嶽)の一つであり、またアガリウーマイ(東御廻り)の巡礼他の一つでもあり重要な場所です。

アガリウーマイ(東御廻り)は、アマミキヨが二ライカナイから渡来して住みついた玉城、知念、佐敷、大里に点在する聖地を巡拝する行事です。琉球王国時代は国王やチフィジン(聞得大君)が巡礼していましたが、民間へと広まり、現在も観光ルートやレクリエーションとして行われています。

グスク内への入り口には、自然の石灰岩を削り抜いて造られた太陽の門があります。この門は、東北東に開口しています。タマグスクでは夏至の日の太陽は63°から昇ります。門の方向は約55°でしたので、夏至の朝日は差し込むと思いますが、開口部のスリットの幅は広いため、観察者の位置を変えれば、長い期間、門を通して夏至の太陽を見ることができます。『平津豊:岩石遺構と太陽の関係の分類、J-AASJ 2022-1,Vol.4(2023)』に当てはめるとスリットB-0型となり、天文利用のための岩石遺構(広義のイワクラ)には該当しません。しかし、この門を通過した夏至の日の出の太陽光は、アガル御イビ・ツレル御イビを照らすという話があります。もしその精度が高ければイビを補助点とするスリットB-1型となり、天文利用のための岩石遺構と言える可能性が出てきます。

さて、なぜこの門を造ったのかについては、太陽信仰と関係があると考えます。琉球王国では、ティガ(太陽)神が最高神であり、沈んだ太陽はティダガアナ(太陽の穴)を通って再生すると考えていました。首里から見て太陽の昇る東にあるセーファーウタキを最高の聖所とし、そのさらに東に浮かぶ久高島を神の島としたのも太陽信仰が根底にあると考えます。

太陽の門への信仰については、アガリティダ(昇る太陽)を崇拝する思想が築城にも適用され、修築の際に石灰岩をくり抜いて城門を造り直したのではないかという話もあり、太陽の門には、夏至の太陽への信仰が加わっているかもしれませんが、第一義的にはグスクの門としての機能です。石造実用設備(非イワクラ)に分類しました。

 

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