041 奈良県 山添村の長寿岩

【Introduction of Iwakura 41】


□分類:目的不明の岩石遺構(広義のイワクラ)

□信仰状況:祭祀されていない

□岩石の形状:巨岩単体、球状

□備考: 奇岩として観光利用、発見当時は丘の上で台座に載せられていた、人工物


□住所:奈良県山辺郡山添村大西

□緯度経度:34°41'6.6"N 136°2'31.7"E

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1992年に、ふるさとセンターの造成工事を行なっていたところ、小高い丘の上に不安定な形で台座の上に載った巨大な石のボールが現れました。

当時、この山の中に人が入ることもなく、この巨岩の存在も謂れも村には全く伝わっていませんでした。工事業者は、造成の邪魔になり、また不安定で危険でもあったので、重機を使って丘の上から転がして今の位置に落としました。さらに、この巨岩を爆破しようとしましたが、爆破するには700万円もの費用がかかることからモニュメントとして残すことになりました。

このとき、台座の岩などは爆破されてしまいましたが、この巨岩だけ残ったので「長寿岩」と名付けられました。

のちに、イワクラ学会などによって、この岩が 古代祭祀が行なわれていた磐座だったのではないかと言われるようになりました。

現在は、奇岩として観光に利用されています。注連縄が付けられていますが、これは村の青年団がかけたもので、宗教的な意味合いはありません(祭祀はされていない)。

長寿岩は、直径7メートル、重量600トンの球体状の花崗岩で、球状風化の典型的なものと考えられます。花崗岩は、たまねぎの皮を剥く様に風化していき、同心球状に薄皮がはがれ、丸い球体が残ることがあります。この現象を「球状風化」といい、その構造を「玉ねぎ状構造」と言います。

また、長寿岩の表面には、石英や長石が成長して形成されたペグマタイトまたはアプライトの白いラインが2本走っています。長寿岩が丸いため、赤道と子午線のように見えます。

重機で落とされる前は、巨大な球形の岩が、不安定に台座の上に据えられていました。

古代の人々は、表面に十字ベルトを持つこの巨岩を神聖視して祀っていたのではないでしょうか。

山添村の神野山(こうのやま)は、聖なる山として村人に崇敬されていますが、長寿岩とこの神野山を結ぶラインの方位角は、冬至の日の入りラインに近い角度となります。そのため、冬至の日に長寿岩から神野山を眺めると、その方向に夕日が沈みます。この長寿岩は神野山信仰に組み入れられた古代祭祀場だったのではないでしょうか。

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