【Introduction of Iwakura181】Visit・Photo:2013.4.29/Write:2025.7.26
□分類:磐座(狭義のイワクラ)
□信仰状況:神社に祭祀されている。
□岩石の形状:双石、2つの丸石
□備考:人工物
□住所:奈良県桜井市三輪
□緯度経度:34°31'36.8"N 135°51'00.3"E
(googleに入力すれば場所が表示されます)
三輪駅から150メートル東の位置に素盞嗚神社が鎮座しています。奈良県神道青年会のホームページでは、「素佐男神社」と表記されていますが、ここでは立看板や社号石標の表記を用いています。
2013年当時の立看板には以下のように書かれていました。
「素盞嗚神社
当社は三輪明神のご祭神大国主命の親神様素佐男命をお祀りしています。元気、勇気、優しさの神「ぎおんさん」という呼び名で親しまれ、老﨔の森の中に悠久の昔から ここに祀られています。毎月七日が祭日で、一月、七月、十月にに大祭を催み 一月の綱掛祭、七月ぎおんさんの夏祭は、特ににぎわいます。
白山神社
この地域は、古くから加賀白山の信仰も篤く、白山大神を祀り、祭礼は氏神社と併わせて祭祀しています。庚申、愛宕、金比羅大権現は「歯痛に霊験ある「歯定さん」といって歯痛に霊験あると信仰されています。
薬師堂
正面、南向きのお堂の中に、十二神将のみ佛に囲まれてお薬師様がお座りになってわたしたちの無事を観守って下さっています。毎月八日、村の有志の女性たちによってお祀りされ 一と四、七、十月の八日には、平等寺の和尚の招来を得、わたしたちみんなの安泰を祈念しています。
世話人一同 合掌」
御祭神は素佐男命となっています。立看板には、素盞嗚尊の子供が大国主命で、大国主命と大物主大神は同神なので、三輪明神の父親を祀っている神社であると書かれ、大神神社との関係を強調していますが、江戸時代には「牛頭天王」を祀る祇園社でしたので、明治時代になってから御祭神を素佐男命に変更したと考えられます。
境内には、金毘羅大権現と書かれた石碑、愛宕と書かれた石碑、白山神社の祠、庚申と書かれた石碑があります。立看板によると庚申、愛宕、金比羅大権現は歯痛に霊験ある「歯定(はじょう)さん」であると書かれています。また、境内には薬師堂やお地蔵様もあり、神仏習合が残っています。さらに、拝殿の前の木に勧請縄(かんじょうなわ)が掛けられています。勧請縄は、奈良や滋賀で多く見られる民間風習で、疫病などの災厄が村の中に侵入するのを防ぐ意味合いで川や道に縄を渡した、一種の結界です。
このような状況から、この場所は民間信仰が集合している場所と考えられます。
さて、この素盞嗚神社には、回り石と呼ばれる2つの丸石が祀られています。もちろん、この場所に2つの丸石が自然にあるはずはありませんので、どこかから丸石を運んできて据えた人工物です。
『三輪山上に於ける巨石群(樋口清之、1927)』には、「薬師堂祇園社 二箇 伏」として登場し、名称は「夫婦岩」と書かれています。
形状からは、石を持ち上げた時に感じる石の重さで祈願成就を試す「おもかる石」や力比べや鍛錬に用いた「力石」によく似ています。
現在、この回り石の前に立看板が置かれて「磐座」と書かれていますが、その内容は回り石の事ではなく、一般的な「磐座」の説明になっています。
『大神神社儀式(1880年)』の四月上卯日の項には、
「未ノ刻、神主以下惣員出仕。次渡ノ馬十二疋、神主ノ邸内ニ揃フ。次渡ノ兒武者ヲ始メ、渡リニ関係ノ者、八乙女一﨟等、薬師堂村ギオン(祗園)社ニ至ル。(堂はギオン社以西ノ地ニアリ。今ナシ。)次八乙女、馬ノ淸祓ヲ行フ。次渡リノ行列ヲナシ、はぜう社(祗園社境内ニアリ)ノ前ノ石ヲ三度廻ル。次兒、同社ニ向ヒ祠中ニ矢ヲ射込ム」と書かれており、大神神社の春の大祭の時には、行列が祗園社の中の石を3度回ったことがわかります。この石が2つの丸石のことと考えて良いと思います。
回り石は、少なくとも明治時代には、大神神社の祭祀に組み込まれていましたので、「おもかる石」や「力石」ではなく、信仰に関わる岩石であったようです。
『大神神社境内地発掘調査報告書(寺沢薫、奈良県立橿原考古学研究所編集、1984)』によると、「磐座」と表記されています。
滑石製模造品や土師器が出土していることから磐座(狭義の磐座)に分類しましたが、神を降臨させる磐座に、簡単に動いてしまう丸石を用いたことには疑問が残ります。
イワクラハンター 平津豊
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